或る日を境にそれは昇華した。
跼天蹐地から耳目の欲へ、
怒りはおかしみとなり、
戦慄は白昼夢となり、
やがては愛にまで昇りつめた。
怖かったのは闇の中の光、遮断される眼界、僕の中の君。
壁は剥がれ、太陽は去り、
黄色いゴンドラは水際を離れ、闇から闇をゆっくりと滑る。
怯まず揺るがず疾走する、
このあたたかく非道な正義を、
君は涙滂沱に受け入れてくれるだろう。
世界は窓越しに少しずつ後退しながら、喧噪をかき消した。
バックミラーに見えたのは、未来の僕らそのものだった。
孤独は相変わらず僕にも君にもぴったりと寄り添っている。
『Taxi Driver』1976年/アメリカ
Tami